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「まぁ、確かにそんな簡単なモンじゃなかったな」
爪楊枝を咥え直す。
「『天法』も一から覚え直しだったし、身体の中の力を魔力から霊力に変換するのなんか、暴れ出したくなる程イテェんだよ」
自嘲する様に唇の端を上げる。
その苦労は人間である和人には半分……十分の一……千分の一も伝わらなかったけど、ニナの表情を見る限り、それは途方もなく辛い工程だった事は分かった。
「そもそも女神と悪魔って、敵対してるんじゃないの?」
そもそもの疑問をニナに聞いたけど、ニナはため息をついて大袈裟に肩をすくめた。
「そんなん、あたいが生まれるより遥か昔の事だっつーの。天界と魔界の戦争なんて大袈裟に言ってっけど、あんなのただの小競り合いだって」
「そ…そうなんだ……」
宗教家が聞いたら卒倒しそうな話を、ニナは平然とした。
「あたいの生まれた街じゃ、夢とか希望なんていっつも売り切れだったからな。悪魔に成るしかなかったんだよ」
ベッドに手を付き、天井を見上げる様に体重を掛ける。
「ま、悪魔の仕事は嫌いじゃなかったがな」
「ヘヘッ」と笑うニナを見て、和人は初めて恐怖とは違う意味で胸が高鳴った。
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