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その鉄の塊を見て、和人は最初『それ』が何か分からなかった。
一番近い形は『拳銃』だったけど、それは和人の知る拳銃とは大きくかけ離れていた。
まず、通常ひとつしか付いてない筈の回転式シリンダーがみっつも付いている。そのみっつのシリンダー自体も回転出来る様に銃身に組み込まれている。それに対応した様に、銃身自体もゴツイ。どんな映画や漫画でも見た事が無い程のゴツさだった。
一瞬で何故そこまで和人に見えたのか……それは、いわゆる『死ぬ間際の集中力』が発動したからかも知れない。
次の瞬間、
ドッドッドッドッドッドッ
腹の底まで響く重苦しい銃声と同時に、窓ガラスが粉々に吹き飛んだ。
「ハイィィィィィィッ!?」
悲痛な叫び声を上げ、和人は反射的にその場にうずくまる。
突如、部屋の中にハリケーンが発生した様な暴風が吹き荒れ、和人の部屋のあらゆる物が割れ、破れ、壊れ、引き裂かれた。
そんな暴風の中、奇跡的に無傷だった和人が恐る恐る顔を上げると、窓枠に足を乗せて部屋に入ろうとしていた女神様と再び目が合った。
「吉岡和人。あんたの『一生のお願い』……あたいが叶えに来たぜ」
そう言ってニッと笑う女神様に、和人は泣き笑いの表情を向ける事しか出来なかった。
※※※
これが吉岡和人の平凡が壊れた日の出来事だった。
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