帰宅途中

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そもそもの発端は2ヶ月前の事だった。 その日、 4月21日の放課後。 彼は好きな女性に告白した。 相手の名前は千道 鞠(センドウ マリ)。 櫻川の学年で1、2を争う容姿を持つ美人だ。 彼は彼女に一目惚れをし、 その日に 櫻川の人生において 初めての告白をおこなった。 沈む夕日をバックにし、 ふるえる己の体を勇気づけ、意を決して。 「好きです」 の一言をつたえた。 だが、 「嫌」 の一言で悪即斬よろしくに切りすてられた。 迷うそぶりすら見られなかった。 彼においては、人生最初の告白だとしても、彼女においては毎日のように繰り返される日常でしかなかった。 その日、千道に告白をし、あっけなくフラれた者達の中に、栄えある。 櫻川 尤徒の名前が加わる事になったのだが、 彼はあきらめが悪かった。なんとその日から毎日のように彼女に告白し続けたのだ。 ある日は、 彼女の切れ長の目や  すじの通った鼻すじや 肩に揃えられた髪など、 彼女の容姿を誉めちぎって告白をし。 またある日は、 彼女のクールな内面を誉めちぎって告白をし。 とある日は 「か、かんちがいしないでください。僕は千道さんの事が好きなだけですからね!」と、 何故か敬語とツンデレ口調で告白し。 その次のある日は、 彼女がトイレに行こうとクラスを出た瞬間をねらって後ろから抱きつき 「I love you,for ever.」と告白したり。 計24日間ずっと告白を し続けた。 そしてついに、約1ヶ月前、千道は折れ、 「じゃあ、帰宅部になって学校から逃走する事が百回できたら考える」 と言わせ、その日、 彼は喜んですぐさま今まで通っていた部員が2人しかいないコンピューター部をやめ、帰宅部へとなったのだ。 そしてそれから1ヶ月。 彼はまだ一度も逃走に成功していない。 ╋┿┿┿┿┿┿┿┿┿┿╋
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