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「ユースィ…ユースィ=ブラックレーベルです…。
ユーとお呼び下さい…あまり長い名前でもありませんからユースィでも構いません」
そう言ってユースィは儚げに微笑んだ。
ドクン。
その顔を見てマルスミアはどきりとした。
『護ってあげたい…』
そう思わせるのに十分な笑顔…。
「リューヴトラ先輩、仕事がないなら私、帰ります。
友人が待っていますので…」
ユースィは哀しげな瞳をリューヴトラに向けて、内側からオートロックの鍵を開けた。
「では、さようなら」
律儀に礼をしてユースィはドアを閉めた。
カチリと音がしてオートロックの鍵が掛かったことが分かる。
リューヴトラはうなだれ、マルスミアは落ち込んでいた。
ユースィはミリアネーズと一緒に帰っていた。
自転車の荷台にユースィは乗り、風を感じていた。
学校がどんどん遠ざかっていく。
ユースィの瞳から一粒、涙がこぼれたのを知るのはこの景色と刻と風ぐらいだろう。
そうして、屋敷に戻る。
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