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「愚かな虫だ。ただ不思議な力を手に入れただけの人間風情が我と戦う夢を抱くことさえ畏れ多いと言うことも解らんのか?」
玉座に座る男の声は底冷えするような声で、今にも倒れそうな青年を見下ろしながら言った。
「うっ……ハァ、ハァ…ハッ、魔…王」
男――"魔王"は青年の後ろで倒れている数人の男女に目を向けた。
辛うじて息はしているようだか、それも時間の問題だろう。
「貴様も愚かだが、そんな貴様に付いてきたハエ達には呆れて物も言えんな」
「…ッ俺の大事な仲間だ!!
何が虫だ!!俺達は人間だ!!!
お互いを支えあって、必死に、生きてる!!それをお前等魔族は!!」
「……………ふむ、くだらん。
実に、くだらんな」
魔王は理解するにも値しないと言うように頬杖をついてただ無情に口を開いた。
「な、なんだと?」
「では聞こう。勇者を名乗るものよ」
青年――"勇者"を見下ろしながら魔王は言った。
「お前は、"必死に生きている"動物や魔族を、…人間を、殺したことはないと?」
「…っ、
……………確かに、ある。
…ッだが、……必要な、犠牲で…仕方の無いことだ……」
勇者は顔を歪め、自分に言い聞かせるように言った。
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