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「…俺は、此処に来るまで沢山の事があった。酷い人間もいたし、優しい感情をもつ魔族だっていた。
そういう奴らを見る度、…自分のやっていることを見る度に……本当にこれで正しいのか、他の道があるんじゃないかって…悩んで、苦しんだ。
でも、お前等魔族は………罪を重ね過ぎた。見過ごすわけにはいかない!」
「……ひとつ、訂正を入れよう。
我は魔族ではない。
魔族だけではなく、全ての生き物を超越した存在。
"魔王"だ」
「…だから俺達には倒せないと言いたいのか?」
「それもあるが、たかが魔族と一緒にしてもらっては我の品位に関わるからな」
平然と言葉を放つ魔王に勇者は目眩を感じた。
「お前っ!!仲間だろ!?」
「面白いことを言う。
"仲間"?ただの駒にすぎん。
………ああ、わかった。
何故"勇者"の名の割には弱すぎるものだから不思議に思っていたが、愛だの仲間だのくだらないことに現を抜かしているからなのか」
「違う!
仲間がいるからこそ俺はここまでやってこれた、守りたいものがあるからこそ、人は強くなれる!」
「ソレが守りたいものか?守れてないではないか」
魔王は勇者の後ろにいる人間達を一瞥し、口の端をわずかに上げて笑う。
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