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その日の帰りは、最寄り駅の本屋さんで妊娠の本を買い、近所のスーパーでは野菜などをたくさん買って帰っていた。
大へのあてつけではない。
ただ、赤ちゃんのために。自分のために・・・。
少しすると大が帰ってきた。
思った通り重い空気の中「ただいま」と言いながら、大が冷蔵庫をあけた。
大は冷蔵庫いっぱいの野菜を見た後、ベッドの近くにある妊娠の本を見つけて、みるみる間に顔が引きつっていった。
大に配慮するだけの余裕がなかった私も悪いとは思うけど、赤ちゃんのために買った物たちは、本当に当てつけのつもりなどなかったのに、ただひたすら大を追い込むだけの物と化してしまったようだった。
ホントに・・・喜んでないんだ・・・。
それが痛いほどに分かって悲しくなった。
やっぱり心のどこかでは期待していたのかもしれない。
でも、これでもう望みはないと思い知らされた。
そして私たちはこの日もまた、日常の会話すらかわすことなくベッドに入った。
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