夜会

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台本に丁寧に従って声を発するかのように、少しも感情をこめられていない声で放つ、漆黒の男。 その言葉さえも、今の執事にとっては恐怖そのものだった。 返事を返すことも、ましてや震えが止まらない体を動かし、この場から逃げ出すことなど出来るはずもなかった。 『………この場から動かないってことは、命を落としてもいいってことだな?』 また漆黒の男は言う。 それと同時に震える執事へと、一歩また一歩とゆっくりだが、確実に距離を縮めていく。 『あっ……あぁ……』 情けない声が執事の口から、無意識に零れていた。
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