序 話「希望の光」

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バンパイア界・ノアの宮殿ーーーーーーー世界貴族がこの宮殿に集まっていた。 「…状況を報告せよ」 世界貴族の一人、リウェスタ卿が報告にきていた兵士に呼びかけた。その兵士は一礼すると状況を説明始めた。 「はっ!首謀者はレナード・グラン…只今、首謀者を捕らえるために兵を総動員して追っております」 「やはりレナードか…」 場にざわめきが起きた。 「直ちにレナードを捕らえよ。決して逃してはならぬぞ!」 「はっ!」 兵士は一礼して出て行った。しばらくその場に沈黙が生じた。 「あの男は以前から我々の祖先が決めた『掟』に不満を抱いてましたものね…」 「この『掟』は絶対だ。代々我々はその掟を守り、民たちのお手本となるようにしてきた。その掟を我々が守らずとして何になる」 「民たちの暴動が起きても不思議ではありませんわね」 バンパイア界にはいくつか掟として定められている。人の血を吸って生きるバンパイアにとっては人間の血はご馳走である。ただし、必要以上の吸血は禁じられている。今では提供者制度を設けてあるのでそれで血を摂取しているのだ。それに掟違反は大罪人として牢獄行きなど厳しい定がある。 「レナードの狙いは何なのでしょうか」 世界貴族の一人、ミッド卿が言った。 「ただクーデターを起こすだけではないようだが…」 被害は拡大し、死者怪我人も大多数に及ぶものとなった。 レナードの狙いは何なのか議論していると廊下を走る音がして傷だらけの兵士が飛び込んできた。 「たっ…大変であります!」 「何事だ」 兵士の尋常じゃない慌てようにリウェスタ卿は落ち着くように促した。 「…ノアの一族、ヴァレッタ家当主リヒト様とシーナ様が何者かの襲撃を受けお亡くなりになりました!」 再び場にざわめきが起こった。世界貴族の集まりに遅れてくる予定だったヴァレッタ家の当主は屋敷からこのノアの宮殿までくる道中に何者かに奇襲をかけられ亡くなったとのことだ。 「なお、生まれたばかりのお子様の消息は不明です。現場にはお二人の遺体しかないとのことです」 「ただちに子の消息調査を…生きていればいいのだが」 リウェスタ卿の言葉に兵士は返事をし、急ぎ足で部屋を出て行った。
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