声ー夏

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【課題】 本当の恋と嘘の恋は違う。 その明確な違いを気付いたのは高2の夏だった。 「あぁあぁああ、暑い!!!!」 夏の暑さが毎年嫌になるのは予想出来ていることだが、頭の中の予想と体で感じる体感では全く別物だ。 それは今年も例外ではなく、毎日うなされるような暑さを感じながら学校に向かい歩を進める。 「悪いけど、言葉に出さないで…もっと暑くなる」 「あぁ、ゴメン。ってなんであんたがあたしの隣にいんの!?あんた補習免れたんじゃなかったの…?」 隣にいるのは同じクラスの男子の工藤。 補習常連のあたしと工藤は今年も補習になった…はずだった。 しかし、今年の夏だけ工藤は補習を免れ、あたしだけが行く羽目になっている。 「あぁ、強制じゃないらしいんだけど、ぎりぎりだったから出来たら来いって言われたんだよ。」 「それって補習じゃん」 「いや、違うぞ。地獄ないもん」 「はぁ!!!!ふざけんな!!!あたしだけあの地獄をくらうのか」 地獄とはノルマ課題のことで大体1教科につき、5枚ほどのプリントが出され、全て終わらないと帰れないという地獄で、あたしは2教科なので10枚やらなければならない。 暑い中、冷房設備が一切ない教室でやるのは地獄としか言えない。 「まぁ、教えてやるから」 「うわ、お前に教えてもらうとか死にたい…。」 「…それ、逆に俺にダメージ来てるよね」 「逝け」 「最悪っ」 けらけらと笑う工藤にあたしも釣られて笑った。
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