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入学式が始まる時間に合わせるように、ゆっくりと新入生がやって来始めた。
「おめでとうございま~す」
新入生と一緒になって緊張気味に、美花はハニカみながら笑顔で挨拶をする。
「おめでとうございます」
対照的に、優は上級生らしいおしとやかな微笑みを見せている。
顔が強張っている新入生達も笑顔で「ありがとうございますっ」と返事をしてくれる。それが嬉しい美花と優。
美花も優も、新入生につられて新鮮な気持ちになりながら、新入生の胸ポケットにミニバラを挿す。
美花は頭の中で、可愛いなぁ~とか、上級生に見えてるかなぁ~なんて、楽しみながら考えている。
パラパラと疎らに来る新入生に、だいぶ慣れてきた手つきでミニバラを挿していた時だった。
体育館へと流れていく新入生の中、美花の目の前に、迷いなくしっかりと立つ男の子がいた。
「……?おめでとう!ようこそ桜学園へ!!」
美花は気にせず笑顔で、その新入生の胸ポケットにミニバラを入れる。
「やっと会えたね」
「?」
なんのこと?
と声も出さず、彼を見る美花の不思議そうな表情を無視して、彼は美花をしっかり見つめると、初々しい爽やかな笑顔を見せた。
「えっ!?」
美花は彼の可愛い笑顔にドキッ!とした。
彼はポケットのミニバラに微笑みかけて、美花に「ありがとう」とお礼を言うと体育館へ入って行った。
「……?」
びっくりしたぁ……な、なんだったんだろ……?それにしても可愛い子だったなぁ~。
「美花!手が止まってるよ!次がつかえてる!」
「あっ!?」
やばい、一瞬忘れてた!!
慌てながらも、何事もなかったかのように気を取り直すと、美花はまた新入生の胸ポケットにミニバラを挿す作業に戻った。
さっきの新入生との些細なやり取りも忘れて。
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