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「……そういう問題なんですかねぇ?」
「そういう問題さ。だから君は悔い改めればいい」
法師の眼を覆っている包帯が、怪しく光っているように見えた。
「その為なら、僕はどんな努力も惜しまないよ」
「へぇ……」
その言葉に、半ば憤りを感じていた行徳の胸中に一筋の光明が照り出した。それは、嗜虐心と云う名の薄汚れた光である。
「じゃあ、あっしが改心する為に必要だと思ったことなら法師様はなんでも実行してくれるってことですかい?」
「そういうことになるね」
「キヒヒ、なるほどぉ」
行徳は、嬉しそうに唸ると周りの風景を見渡した。すると、鋭角な石塊を視覚が捉える。そして、その場まで飛んでいくと石塊の頭上でグルグル回り始めたのだ。
「法師様、あっしが改心するにはこの石塊で法師様が自分で自分の頭をかち割ってくれないと駄目みたいでっさぁ。どうにか、頭をぱっくりやってくれやせんかねぇ?」
「了解。わかったよ」
法師はそういうと、ゆっくりとした足取りで行徳の飛んでいる場所まで行き、被り笠を脱いでからお望み通り自分の頭上へ石塊を躊躇うことなく振り下ろした。硬固同士が衝突した時特有の、重く鈍い音が雨音と混ざり合って山中に響き渡る。そして、倒壊したダムから水が奔流するかのように、頭から勢いよく血が噴出した。
惚けた声を出して、現状を把握し兼ねる行徳。これで法師の薄ら笑いを止める他、諸々の戯言を形骸化しようと目論んでいた訳だったのだが……。つまるところ、本当にこの石塊で己の頭をかち割ろうとは露にも思わなかったのである。
「ああ……これで……改心する気を……起してくれ……ましたかね?」
噴き出す血を被り笠で覆いつつ、覚束ない足取りで行徳に近づく。
「キヒヒ、こりゃあまたなかなか面白そうだぁ」
近づく法師の周りを飛び交いながら、退屈を紛らわす道具を手に入れたことへ歓喜する。この法師の意思が折れるまで精々遊んでやらぁと悔しさを胸に秘めて。
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