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◆◇◆◇◆
まずい。これは本当にまずいぞ。
なんとかアイツを振り切り、今は廃ビルにあるそこそこ広い部屋の一つに身を潜めている。
上がった息を整えながら、目を閉じ、静かに耳を澄ませる。・・・・・・よし、まだ気づかれていないようだな。
アイツから逃げること数階、どうして俺の居場所が分かるのか見当がついた。どうやら、アイツは足の音で俺の位置を把握しているらしい。
このビルには何もなく、むき出しのコンクリートで覆われている。さらに、この廃ビル群は人はおらず、静かだ。そのせいで、小さな音でも反響してしまう。
・・・・・・状況を整理してみよう。
アイツは火力、マナのチャージ速度、その容量、全ての点で勝っている。これはもう、技術で押し返すのは難しい。これを打開するには――
「"一点突破"か」
俺の"技"の一つ。これならいけるだろう。攻撃を集中させ、アイツの撒き散らす炎を貫き、攻撃を通す。
一階までまだ数十階ある。戦いながら逃げる手もあるが、あんな攻撃をかわしながら逃げ切る自信はない。これしかないのか。
カツン――
「っ!」
廃ビルに響く、やや高い音。それを聴いた刹那、俺は身なりを気にせずに床を蹴り、そして転がる。
そして、もたれていた壁が吹き飛んだ。中にある鉄筋も見るからに木っ端微塵だ。もしアイツの足音に気付かなかったら、食らっていたな。
俺は服についた埃やコンクリートの破片を払いながら言う。
「ほんと化け物染みてるな、アンタ。つーかいつまで着いてくんだよ?」
「てめーに借りを返してもらうまで、付き合ってもらうぞ」
「それは、だりーな。じゃ、そろそろ鬼ごっこにも飽きたことだし、やるか!」
俺は叩きつけるように足元を拳で殴る。そこから、幾何学的な円形の模様が広がる。
「武装召喚!」
魔法陣からスッと地面から刀が現れ、俺はそれを手に取った。
その刀は普通の物だったが、側面には集積回路を思わせるような模様が浮かんでいる。
武装召喚とは、その名の通り武器を召喚する事だ。これは全員使える訳ではないが、珍しいものでもない。だいたい三人に一人位か。
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