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街の隅にある、とある廃ビル群。
都市開発の波に呑まれ、時間や時代からも放置されている。
遠くには今も華やかなに輝き、自らの役目を果たさんとする街のビル。それを恨むように、夜の暗闇に佇む廃ビル群。
ここら一帯にはどれもこれもこんな建物しかない。必要とされず、金が掛かるからと見捨てられた、哀れな建物たちだけ。
そんなところに、誰かがいる。時間や時代からも隔離された廃ビル群に。
それは、少年だった。
年は高校生くらいだろうか。短い黒い髪にやや細い瞳。特徴は力強い眼光だ。
服装は黒い長ズボンに白いYシャツに赤いブレザー。
あまりにも似つかわしくない光景だ。
この廃ビルで、何が起きているのだろうか?
◆◇◆◇◆
「ガハァ!!?」
地面をバウンドしながらコンクリートの壁へ突っ込んだ。
背中を強く打ちつけたせいで肺の空気が漏れ出す。
そんな事を気にしている場合じゃない。まずは状況把握だ。
所々怪我をしているが全て掠り傷と打撲。問題はない。無いのだが・・・・・・。
「くそっ」
小さく悪態をつくと、立ち上がる。
「簡単なミッションだったのに、どうしてこうなる・・・・・・?」
ここはビルの中。誰も住んでおらず、風のながれも無いせいで積もっていた埃を被ってしまった。服に付いた埃を軽く払い、前を向く。
ゆったりとした動作で、俺の前へ現れる男。
見た目は18歳かそこら。着崩した黒い学ランを着た、短髪でごつい男が現れた。
「ったく、少しは休ませろよ」
その言葉には答えず、そいつが全力でタックルを繰り出す。
ドガンッ!という何やらコンクリートが砕け散る音がしたが、避けきった。
「あっぶねぇ」
見ると、鉄筋のはずの壁に穴が――。
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