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序章
「ちょっきさんちょっきさん!」
私は、機能性に優れたディノスの椅子に座り、黙々と机に向かう男性に向けて言った。
「うるさい黙れ」
机に向かってカリカリとペンを動かしながら、私の方など見る事もなく、その男性……ちょっきさんは言った。
ちょっきさんというのは、携帯小説における私のお師匠様だ。
もちろん、本人からの許可も得ず、私が勝手に弟子を名乗っているだけだ。
そして、今日も本人からの許可も得ず、こうしてピッキングなどを駆使して、ちょっきさんの家にお邪魔している。
ちなみに、先刻ちょっきさんが冷たく言い放った、『うるさい黙れ』は、彼の口癖だ。
しかし、なぜか私以外の人に対して、この台詞を言っている姿を見たことはない。
私は、熱心に机に向かうちょっきさんを気遣うはずもなく、ちょっきさんの右肩に手を置き、言葉を続ける。
「ちょっと見てくださいよこれ、酷いんですよこれ!」
そう言いながら、原稿へと目を向けるちょっきさんの目の前に、携帯電話を滑り込ませる。
しかし、ちょっきさんは、
「酷いのはお前の脳内だけで充分だ」
と冷たく言い切りながら、私の手から携帯電話を奪い、ゴミ箱に投げ捨てようとした。
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