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自分でも何故そう言ったのかは分からない。
緊張したのか、単なる怒りのせいなのか、私は呼吸を乱し、肩を震わせて相手を睨みつけた。
男はしばらくきょとん、とした顔で私を見ていたが、不意ににかっと笑った。
「なら丁度いいや」
「は?」
彼は困惑している私の手に“何か”を握らせた。
「どうせ行く当てが無かったから此処来たんだろ? 手伝えよ」
腕組みをして上から目線でものを言う彼をよそに、私はおもむろに“何か”がある手に目を落とした。
ペンキブラシ……
うんざりして彼の方をちらりと見ると…
「傷の手当てしてやったんだ。少しぐらい俺のお願い聞いて貰ってもいいじゃん?」
彼の笑みからどす黒いオーラが漂っている
だがそれがどうした
私が抗議の声を上げようとしたその時
ぐきゅるるるるるぐうぅ~
私の腹時計がお昼時を知らせた。
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