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「すぐに先輩に知らせないと!」
と、刑事は額に汗を流してスーツのポケットから携帯を取り出す。
あたしはその行動に頷くと、すぐ様踵を返した。
(これは前代未聞の大スクープになるに違いないわ!)
不安と興奮が同時に心を襲ったけど、あたしの心は興奮という名の期待が勝った。
これが成功すれば、借金なんて返せるし、自称じゃなくて本物のプロジャーナリストになれる。
(違う。あたしは……)
そう。多分、あたしは同じ過ちを繰り返したくないんだ。
『アンタのせいで──!』
傷を抉るような過去を──あの人の言葉を思い出して、あたしは全力で走りながら唇を噛んだ。
今は、11時47分。
あたしは首を振って、全力で会社まで走った。
(もう、逃げたくないから)
頬に冷たい水が伝う。
それを腕で拭いながら、あたしは足を動かした。
─────Keep Out──────
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