冬の夜にジントニックを

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「ハーパーをロックで」  三杯までで帰るつもりだったが、四杯目になった。少し明日の仕事が頭によぎる。しかし、こんないい店を見つけたからと、自分自身に訳の解らない言い訳をしながら、四杯目で唇を湿らせる。  急に酔いがまわってきた。  首周りが窮屈になり、ネクタイを緩める。顔がほてり紅くなる。気分が浮き上がり、自然と口数も多くなる。  5杯目のラムトニックを飲み干した時、自分がかなり酔っているのを自覚した。  少し酔いを覚まそうと立ち上がったときによろけてしまった。  これ以上はまた恥をかくなと、思いながらトイレに向かう。  用を足して、手をすすぎながら鏡に映った自分を見た。 (今日も飲みすぎだ)  鏡の赤い顔した自分を見てそう思った。 「ごちそうさま。チェックして」  席に戻るとそういいながら懐の財布を探る。千夜さんはまず水を出してくれてから、電卓をはじきはじめた。  冷えた水がのどを通り酔いを覚ましていく。 「4千6百円になります」  財布をみるとちょうど5千円札が顔を覗かせている。それを取り出そうとした時に、肌に切れ込む嫌な感触を感じた。 「つッ」  慌てて指を離したが、中指の先はさっくりと裂けていた。痛みはないが、血が沸きだしてきた。
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