1人が本棚に入れています
本棚に追加
彼女のまぶたは閉じられていた。黒く長い睫毛が震えたかと思うと、両目は開かれた。
その両の瞳は金色で、瞳孔は縦に割れていた。
(逃げろ!)
本能が叫び声をあげるが、体は動かない。痺れたように、いや、体の感覚が失せたかのようだ。
右手首から彼女の手が離れる。
右手を差し出したままで動けない私を見て彼女が笑った。
白く長い犬歯を見せて。
コツ、コツ、コツ。
彼女が視界から右に消えていく。
コツ、コツ、コツ。
足音が近づく。
右肩を後ろに引かれて、倒れるようにして椅子に座った。
キィ
軋む音が小さくなり、椅子が回って、彼女が目の前にいた。
最初のコメントを投稿しよう!