冬の夜にジントニックを

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「う……」  二日酔いのけだるい頭痛で目が覚めた。  部屋のベッドの上で着替えもせずに寝転んでいた。 「また、やったか」  自分の行為に軽い後悔を覚えながら、時計を見ると7時を少し回ったところだった。  とりあえず服を脱いで、シャワーを浴びよう。  冬の日はゆっくりと湯舟につかりたいがそれには時間がない。 「ん?」  右手の中指を怪我している。いつの間に怪我したのか、絆創膏まで貼っているのに記憶がない。  酒で記憶がないなんて一度もないのに。  ズキ。  傷が痛んだ。  ズキ。  絆創膏を剥がす。  ズキン。  傷口が口を開けている。  ズキン。  赤黒い血が固まっている。  ズキ  親指で傷口を撫でる。  ズキ  親指で傷口をこする。  プチ  親指と中指の間から血が流れだした。  鏡を見る。  首筋に虫さされのような赤い斑点が二つ並んでいる。  そして、私は笑っていた。
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