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「それで急いでタクに乗ったら、運ちゃんが新人で、寝れるって思ってたのに、『すいません、道わかりません』って。寝られなくて、着いたらもうふらふら」
「アハハハ。災難やなぁ。タクやったら、岩に帰るときに乗ったら、女や思て遠回りしやったから腹立って、岩の手前でひゅって消えたった。したら、その運ちゃん真っ青なって」
「え、何? あのタクから消える女ってカナさん?」
「よそは知らんけど、あの辺りはウチやな。でも、そっからしばらく夜中に帰ろ思ても、タク行きよらへん。あれは困ったわ」
「いや、それは怖い。むっちゃ怖い。でもそれなら、ちょっと祟ったらいいのに」
「うん。そやな」
カナの表情にふっと影がさした。深いため息の後で、ぐいっとグラスに残っていたラムを飲み干した。
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