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その道は川岸に植えられた木々のために、電灯の明かりも遮られて薄暗い。
だが、良く晴れた冬の夜空に半月もでている。暗くても怖いとかはなかった。
時々、木々を揺らす風が身を切るような寒さだった。川はガードレールの下で夜の闇と溶けあって、静かに流れている。
緩やかに曲がる道の向こうに、看板らしい明かりを見付けた。
(こんなところに店があったか?)
疑問と期待で自然に足が速くなる。
(どうせスナックだろ)
そう思いながらも、最後はなかば駆け足だった。むしろ、そうしなければふっと消えてしまいそうな感じがした。
店の前までくると、そこだけどこかのヨーロッパの建物のような石造りで、窓は高い所にあり、明かりが見えるだけで中は分からない。
看板はどこでもありそうな電光のものだが、「Cafe KARMILA」と飾り文字で書かれており、どことなく品がある。メーカーのロゴが一切ないのもまたいい。
扉まで5段ほどの石段を黒光りする鉄の手すりに軽く触りながらあがる。
ノブに手をかけたところで、扉に打ち付けられた銅板に気付いた。
「夜8時から夜明けまで。
定休日:日曜。
聖職者と子供おことわり」
期待でぞくりと身体が震えた。
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