冬の夜にジントニックを

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 扉を開けると、温かな空気とともに、酒とタバコの匂いがした。そして、穏やかな「いらっしゃいませ」の声。  カウンターの中に立つ彼女に自然と目がいった。血の気が感じられないくらい白い肌に、癖が一切ないような漆黒のストレートヘアを後ろでまとめている。切れ長な細い目に薄い茶色の瞳が私を見ている。穏やかに微笑んだ唇がそこだけ血の気を宿したような朱色。  正直、見ただけでぞくりとした。  後ろ手で扉を閉めて中に入る。10人ほどが座れるカウンターが目の前にあり、扉側の壁にテーブルが二つ。全体的に落ち着いた雰囲気だが、似つかわしくないものがある。扉の右側に立っている西洋風の甲冑、そして、奥の壁にある棚に並んだ細々とした雑貨。  客はカウンターで小肥りの中年男が独りビールを飲んでいた。 「どうぞ」  彼女の声に導かれるままに、私はカウンターに座った。
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