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退屈な毎日から抜け出そうと、吹奏楽部に所属してから、3ヶ月と少し。
季節は夏になっていた。
8月12日。
今日は先輩達のコンクールがあり、先輩は勿論、顧問も誰ひとりいなかった。
私達の代は、サボり癖が酷く、その日は楽器の音は聞こえず、代わりに笑い声が響いていた。
「里奈ぁ~」
「あれ、莉々花?どうしたの?」
「暇すぎて死にそう…」
うなだれながら、私達の練習教室へ入って来たコイツは、益岡 莉々花。
お世辞無しに可愛くて、性格もサバサバしている莉々花は、男女共に人気がある。
そんな、漫画に出て来そうな女の子だった。
「暇なら練習しなよ」
「里奈も暇人なくせに」
からかうように言えば、拗ねたように頬を膨らます莉々花。
コイツには何があっても勝てないな、と思ってしまう程の破壊力。
そんな莉々花を尻目に、携帯を弄りながら適当に流しておいた。
「堂々と不要物出すなよ」とか言う莉々花に、カメラを向け、連写して黙らせていると
「遠藤ぉー暇やー」
アルトサックスを片手に入って来た、柏井 康介。
伸びてきた坊主頭に、垂れた一重の目。
カッコイイとは言い難いのに、3年生にいる、吹奏楽部で大人気の先輩と付き合っているから驚きだ。
……まぁ私自身、柏井と話した事はないけど。
「遠藤ぉぉおぉぉおお」
「暑苦しいわ!!」
私は携帯を弄るフリをしながら、パート唯一の男子、遠藤 夏樹と話す柏井を観察してみた。
猫のようにじゃれあう2人。
困っているように笑う柏井を見て、心臓が跳びはねる。
……え、ちょ、何で…
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