memory.2

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引っ越しをした次の日、仕事を終えた僕は帰宅途中にあるコンビニに足を運んだ そして、晩飯を適当に選んでレジで清算してコンビニを出ようとした その時 「あの、人違いだったらご免なさい…もしかして鈴木遥くん…ですか?」 不意に後ろから自信なさげな声で僕の名前を呼ばれた 僕が振り返ると、そこには以前の面影を僅かに残したままの彼女が立っていた 数年会わない間に彼女はまるで別人のようになっていた 正確に言えば、以前はショートカットだった髪が背中程までの長さまでなっていた事、 内向的な性格が、赤の他人かも知れない人間にこの様な事を聞ける程に社交的になった事 この二つの事しか変化していないように見えたものの後者の変化はとても大きく、今の彼女の表情は以前とは違い、とても明るい表情になっていた けれど、先程も言った様に変わっていない部分も幾つかあった 実年齢より幼く見える顔、左目の下にある泣き黒子 そして優しい声…彼女の声は僕にとって特別で、例え見た目がガラリと変わっても声を聞けば彼女だと当てる自信はある 僕は話し掛けられて直ぐに彼女だと気付いたものの、暫くの間は立ち止まったまま何も出来なかった
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