紫陽花の女

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私は紫を自分のものにしたいと強く願いました。そして楽屋から、あじさい座から連れだしました。蝸牛の市に宿屋があります。荷車の上に大きな箱が乗っており、そこで男女が交わるのです。私たちはそこで一夜を過ごしました。 翌日私が目を覚ますと、隣で寝ていたのは別人でした。よくよく見ると顔立ちは紫なのですが、西洋人形のように髪が金になりくるくるしています。紫は目を覚ますと金の睫毛に縁取られた碧の瞳で私を見つめました。彼女の胸にはあの刃物で刺された跡がくっきり残っています。 私は彼女の言っていた意味をようやく理解しました。彼女は生まれ変わったのです。 「……紫?」 私は恐る恐る名前を呼びました。すると彼女はきょとんとして 「……Violet。」 と流暢な英語で名乗りました。 それが一度目の生まれ変わりでした。
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