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いい加減、大輔の怒りが限界突破しそうだったので、俺は縛っていた縄を解く作業に取り掛かる。
「いやー、悪いな。これからお世話になるから、お前が喜ぶことをしてやろうという俺の善意からきた行動なんだ。崇めてくれ」
「へへー、武憲様ー。ってなんでだよ!崇める要素皆無だろお前!!」
「ノリツッコミの達人の通り名は伊達じゃないな……」
ゴクリ……。
「話逸らすな!さっさと俺の部屋から出てけこのやろう!」
「まぁまぁ、縄解いてやったんだから、一週間くらいいいじゃんかよ」
「お前が元凶なんですけどねぇ!!」
「あっ、お茶くれ」
「おう、分かった……だから帰れ!!」
今は家に帰りたくないのですわ。すわすわ。
「実はな大輔。俺がここに来たのは海よりも深い理由があってな」
「待て待て待て!!お前の回想とかどうでもいいから!!早く帰ってくれ」
俺は、立ち上がって抗議してくる大輔の言葉の嵐を全て受け流しながら、とっとと過去話に突入する。
そんな俺の様子を見て、大輔はなにかを諦めたような目をしながら、押し黙る。普通に空気読める奴だ。
「実はな俺の家族が……やけにかまってくるんだよ!!」
「どうでもいいわ!!ちょっと真面目に聞いてやるかとか思ってた自分が悲しいよ!」
「いやだってあれだぞ?俺の母さんだぞ?あんな、息子をミジンコかなにかと一緒としか見ていない母さんまでだぞ?おおぅふ。寒気してきた」
ブルブルと震える肩を両手で押さえつけながら、俺は事の始まりを回想してみる。
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