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長い髪が前へと踊る。
片手はしっかりとフェンスを握り締めて放さない。
「これは貴方の望み?長谷優璃」
キシリとミキの上から音がする。
見下ろしているのだ。
「貴方を慕っていた弟すらも殺して、貴方は自殺女神という邪神になりたいの?」
ミキが一人で話す。
独り言のような訴えを。
キシリと響く音が遠退いていく。
「聞こえないのかしら。そうよね。他人の声なんか聞きたくない。それは全て貴方を拒絶するから。だから、貴方は恨み怨んだ」
地面に抱かれて、終わらされてしまった幼なじみたちを見つめる。
その視界が歪む。
「救えるわけがない。貴方のような存在はもう諦めているのだから。誰の声もノイズでしかない。世界を拒絶したから。奪うことしかできない」
いつしか軋む音は無くなり、緑の灯りとなっていた傘も消えていた。
天からは虚しく白い明かりが射し込みだしていた。
「知っているわ……他人の気持ちほど理解できないものはない。他人の尺度で他人を計れない。貴方の気持ちなんか貴方にしか分からない。だから……」
ぽつり、と雨が落ちる。
「私の気持ちも、貴方には理解できはしない」
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