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両親が出掛けている時にミキを自宅に呼び出した。
玄関先で見た顔はやたら冷たく感じた。
「で、何?」
部屋に入るなりベッドに腰掛けて問い掛けてきた。
その瞳が愚者を見るような底冷えの色をしていて口を開くのがやたら重くなる。
閉じた扉の前でいくらか黙って立ち尽くしていたが意を決して目を合わせた。
「ゆう姉さんを知ってるだろ?」「あの元気いっぱいのお姉さんでしょ?」
ミキも何回か顔を合わせたことがあり、ゆう姉は人形みたいとミキをよく誉めていた。
「……ゆう姉が死んだ……」
ミキは驚かなかった。
やはり知っていたのかと思った。
「頼む!もしゆう姉と話せるなら」
「ダメです」
全て言い切る前にミキは否定で打ち消した。
だが、直人は食い下がる。
「ゆう姉があんな扱いなんだ!せめて理由を」
「あなたには何もできない」
その一言は矢のようだった。
「生者が死人にできることは迷いなく天に昇ることを祈るただ一つだけ。変に手を出さないで」
今までに聞いたこともない厳しいもので言い、真っ直ぐに見つめ返された。
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