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「そんなの分かんねぇだろ!」
そう怒鳴ったのは直人自身バカなことだと後で思った。
だが、その時は頭に血が上っていて気が付かなかった。
「ゆう姉が意味もなく殺さないし死にもしない!あんなやる気ない記事にゆう姉を侮辱されたくない!」
真実を知りたかった。
それだけだったかもしれない。
けれど侮辱されたくないのも事実だった。
ミキは数回瞬いてから目を伏せた。
「それは神谷くんの自己満足を満たす理由。私は誰も助けないし救わない。誰も他人を救えないの。それに、誰があなたの言い分を聞くというの?」
さらさらと流れるように言葉を紡いでいくミキ。
それを理解したくても理解できない直人が拳を握り締めて震わせている。
溜息を細く吐くとミキは立ち上がり直人の前まで行く。
「退いて。帰るわ」
直人は黙って動かなかった。
ミキは直人が動くまでそこで待ち続けた。
その間は静寂だった。
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