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背後にいた女子が短く声をあげたので振り返った。
淡い緑の傘に灰色のコートを来ていた女子は上を見ていた。
その先を探して傘を傾けて上を見る。
その先は屋上。
立ち入り禁止になっているはずの屋上に女がいた。
後ろ姿だが長い黒髪に白いワンピースを着た女だとすぐに分かった。
おかしなことに女は何もないところに吊されるように爪先を下に向けている。
否、吊されている。
黒髪の合間からロープが見えた。
それは項辺りからで、ちょうど首を吊ったような感じだ。
だが、ロープは灰色の雲から下りていた。
それに瞬きを繰り返すと風があったのか、女がこちらへと回ってきた。
白い顔をした綺麗な女だ。
だが、その表情は絵に描いたような張り付いた微笑。
怖いとか気持ち悪いよりも違和感が強かった。
その垂れ下がった腕がぴくりと動いた。そして、明確な意志でもって何かを指差した。
それは一瞬自分を指しているのではと疑ったが少しばかり自身より先だと気付いた。
視線を向けると人がいた。
制服を着た女子生徒。
腕を変な方に曲げて、水溜まりを赤く染め上げている。
すぐに理解した。
死んでいると。
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