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「そういうミキはどうなんだよ」
何かが悔しかったのか司が強めに言うとミキは深々とため息を吐き出した。
「もともと二人で来ていたんです。けど、邪魔されて二階の教室に閉じ込められたので、ガラスを割ってカーテン使って降りてきました」
「よく分からんが……アグレッシブだよな。ミキって」
「それはどうも」
司が若干口端を引きつらせる。
それに大した反応を見せることもなくミキは直人を見る。
直人自身の視線が屋上を見ているのに不快そうに進言した。
「帰りますよ。家に着くのがこれ以上遅くなれば補導されてしまいます」
立ち上がり促すと司も立ち上がった。
しかし、直人はじっと屋上を見つめていた。
「直人」
「ミキは……“見えてた”のか?」
「え?」
問い掛けられてミキは怪訝そうに眉根を寄せた。
「灰色のコートを着た女子生徒」
「……」
ミキは沈黙した。
それによく分からないと訴えるように司は直人とミキの顔を交互に見比べる。
身体を起こした直人はじっとミキを見た。
「“見えてない”んだな、ミキには。女子生徒の姿が」
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