長谷優璃

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もう、宵闇へと変わった空。 扉を抜けたその先、屋上の真ん中にいた。 宵闇の真っ暗な天から降りた紐で首を吊った女自殺女神が。 否、 「久しぶりだね。“ゆう姉”」 直人がそう言えば、キシリと紐が軋んだ音を立てた。 張り付けたような微笑みは変わらない。 「そんな姿だから分からなかった。だけど、茶の瞳はゆう姉のものだ」 キシリキシリと紐が軋む。 風は吹いていたが本体は揺れていない不可思議な感覚。 直人は目を細めた。思い出すように。 「この国では人は神になれる。そう教えてくれたけど、まさか実践してくれるとは思わなかった。しかも……乗っ取るなんてやり方で」 風が前髪を乱れさせていたが気にすることもなく直人は自殺女神になった長谷優璃を見つめた。 「ゆう姉の姿をしたのが自殺女神のモデルのイシュタブだろ?一度だけ口を開いた片言な日本語でなんとなくだけど分かる。それともう一人……」 すっと長谷優璃の後ろを見た。 そこにはゆう姉の姿があった。 だが、瞳は茶だ。 「ゆう姉だね。その人も」 ゆう姉は驚くこともなく直人を見つめ返した。 知られていたのを見越したように。
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