長谷優璃

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「ゆう姉は正義感が強かった。正当なものを正当と言えて、間違いを間違いと言える人。理由と平等を貴ぶ人。可能性として……ゆう姉は最期に病んで多重人格者になった」 そうして、本能が自殺女神になった。理性は間違えないようにと傍らで本来の神と見定めていた。 長谷優璃もゆう姉も表情は一切変わらない。 それでも直人は続けた。 「ゆう姉はイシュタブを知っていたんだろ?だから強く願って呼び付けた。信仰の失われたマヤの神を……。けど、救ってもらうためじゃなかった」 キシリとまた音が波紋のように広がる。 直人は長谷優璃を強く射ぬくように見据えた。 「復讐するためだ」 一際強く吹いた風が直人とゆう姉の髪を攫った。 風が落ち着けば哀しげな色を瞳に浮かべる。 「どうしてだよ?あんなに優しかったのに。ゆう姉だけで五十人も殺してしまって……それじゃあ、ゆう姉も救われないじゃねぇかよ!」 「救ってほしいなんて思っていない」 男とも女とも取れる声がした。 顔を上げるが、吊された長谷優璃とゆう姉。直人。背後の扉は閉まっていて。 誰か。
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