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トーマ先輩はそう告げたあと、訪れた沈黙に弱ったように目をそらした。
「自惚れかも知れないけど、お前も俺を見てくれてる気がしたんだ。
だから、体育館でふざけてて、なんとなく押し倒したような体勢になった時、耳まで真っ赤になって俺を見上げるお前の姿を見て、なんだかすげードキドキして……。
気が付いたら、キスしてた」
彼はそう漏らしたあと、息をつき、
「だけど、身体を突き飛ばされて、次の日に謝りに行ったら、『なかったことにする』なんて言われて、すげーショックだった」
彼そう言って弱ったように髪をかき上げた後、
こちらを真っ直ぐに見た。
真剣な瞳。
そして
彼の頬が少しだけ紅潮していた。
強い風が吹いて、
今までの苦しさや切なさが流れる髪の先から後方へと流れていく気がした。
胸が熱くて、嬉しくて、
熱い涙が流れる。
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