◇いつもの朝◇

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北風がびゅうびゅう吹き、凍えるように寒いある早朝、一人の少女が片手にバケツを持ちながら山道を下っていた。 彼女の名前はエリーナ。 歳は17、金髪のぼさぼさの髪は腰まであり、色は白く、瞳は美しいエメラルドグリーンをしていた。 ぼろぼろの服を何重にも重ね着し、頭には灰色の頭巾、破けた靴下の上には、毛皮で出来たブーツを履いていた。 彼女は、山の上の高原に住むポム夫妻に育てられていた。とは言っても、ポム夫妻は彼女の実の親ではないのだ。 彼女は幼い頃に、街で迷子になっているのをポム夫妻に見つけられ、現在まで我が子のように育ててもらっていた。 彼女が拾われたとき、実の親の形見とも思われる大きな宝石のついた金の指輪を身につけていたため、彼女らは、実の両親は亡くなったことにしていた。 しかし、彼女はこんな状況でもいつも前向きで、明るく、心優しい少女であった。 「さむー。」 エリーナは凍える体を擦りながら、井戸までの道をひたすら歩いていた。バケツを持つその手は、霜焼けで赤い。 家から井戸までは歩きで30分ほどかかり、エリーナは毎朝この水汲み当番をしていた。 このバケツ一杯分の水で1日過ごすわけであるから、毎日の生活はつねに苦しいものであった。 エリーナは、この大切な水を汲むために、吹雪の中でもでかけなければいけない身であった。 「でも、今日は昨日ほど寒くはないわ! ありがたいことよ。」 そうやって、エリーナはいつも自分を励ましていた。 「うぅ…。でも、やっぱり寒いわね。 そうだ!走ればいいのね!」 エリーナはバケツを持ったまま山道をかけ降りていった。 始めは向かい風が痛く感じたが、少したつとそれも感じなくなった。 こうして、井戸までの遠い道のりをひたすら駆けていった。
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