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「別に…。だれもお前に走れなんて命令してないし。 エリーナが勝手に走ってきたんだろ。」
「それは…。 でもひどいわよー!」
「ふふっ。お前ってほんとに見てておもしろいよ!」
「ちょ、ちょっと! からかわないでよっ。」
「ははははっ! あれ?」
二人が言い争ってると、道の反対側からひとりのおばあさんがやって来た。山の中腹に一人で住んでいる親しい老人であった。
「あっ! ジャック? スーおばあちゃんよ!
おばあちゃーん!」
エリーナは、スーおばさんのところへ駆け寄った。
「おはようございます!おばあちゃん!」
「おうおう。エリーナじゃあないかい。 朝から元気だねえ。 あらあら、そこにいるのはジャックだね。」
「おばあちゃん? さっきからジャックが私をからかってくるのよ? もう、頭にくるわよ!」
「まぁまぁ、けんかできるのも若いときだけなんじゃから。 そんなに怒ってると魔女様がきちまうぞ?
あ、忘れとったが、明日の晩は嵐になるそうじゃよ、嵐が来るときは魔女様がお怒りのときじゃとよく言うじゃろ? なにか不吉なことも起こるかもしれん。お二人さんも気を付けるんじゃぞ。」
老人はそう言い残すと、そのまま山を降りていった。
二人の間にはしばらく沈黙の時間が続いた。
「おいエリーナ、帰るぞ。」
エリーナは先を行くジャックに続いた。
「ねぇ、ジャックはおばあちゃんの話って信じてる?」
「話って? あの、よく出てくる魔女様とかいうやつのこと?」
「うん。魔女なんてほんとにいるわけないよね?」
「俺は良くわからないけど…。でも、それって昔からある伝説だけど、本当の事だっていう説を唱える人もいるみたいだよ。」
「そうなんだ。その魔女っていうのは悪い人なの?」
「まぁ…。そういう事じゃないか? 俺たちの住んでいるこの星が氷ばっかりなのもそいつの仕業らしいし。」
「じゃあ、あの有名な言い伝えにある“世界の終末に救世主がきて世界を救ってくれる”とかいうのは、つまり…
魔女がこの世界を滅ぼすときに、誰か英雄が現れて、魔女をやっつけてくれるってこと?」
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