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「はぁ……私に何か出来ないかしら…。」
元気だった父は、一週間ほど前にいきなり原因不明の高熱に襲われ、それからというもの、日に日に体調悪化していくばかりであった。
働き手だった父が病に伏せてしまったことで、エリーナ達はそれまで以上に生活に困っていた。
しかしだからといって医者を連れてくるのは、かなりのお金が必要であり、その日の暮らしも危ういこの家にとっては医者を呼ぶことは全く不可能なことであった。
「お金かぁ…。お金になりそうなものはないかな……。」
エリーナはベッドからのそっと立ち上がり、小さな部屋の中のありとあらゆる場所を探した。
しかし、そこにあるのは小さなベッドと、小さな机と椅子…そして、何着かのぼろぼろの服があるばかりで、お金に変えられそうなものは何一つなかった。
「やっぱりないかぁ…。」
エリーナは再びベッドに腰掛け、大きくため息をついた。
もう半分諦めようとしていた。
が。しかし!
そのときふと、エリーナの頭によぎったものがあった。
「そうか! これだわ~!!」
彼女は、自分の服の中から、いつも肌身離さず持ち歩いている、首から下げられた指輪を取り出した。
そして、一目散にはしごをかけ降りていき、母の元に行った。
「お母さん!お母さん! 私決めた! これを売って、そのお金でお医者様を呼んでくるわ!」
母はいきなりのことに戸惑っていたが、エリーナの手の上にあるものを見て驚いた。
「エ、エリーナ…? まさか、その指輪を売るつもりなの?」
「ええ…そうよ。 これならきっとお医者様も呼べるわ。」
「だって…それは、あなたの亡くなったお母様の形見の指輪じゃない…気持ちは分かるけど、それだけはダメよ。」
母は、沈んだ表情で言った。
「お母さん! このままじゃお父さん死んじゃうわっ! 私…。
お母さんはいいの?」
エリーナは、込み上げる思いを一気に出した。
「エリーナ…。 いいわけないじゃない。 でも、その指輪を売って悲しむのはあなたなのよ?
お母様からの唯一の形見でしょ?」
「私、後悔しないよ!
それに…天国のお母様もきっと喜んでくれると思うの。
お母さん! 私は大丈夫よ。」
すると母は微笑んで、一回うなずいた。
「エリーナがそれで後悔しないっていうんなら、お母さん許可してあげる!」
「ほ、ほんと?
ありがとう。お母さん!
私、明日町に行って お金に代えてくるわね!」
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