表裏一体 ~chapter1~

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「汚れてる……」 腰を下ろし、彼と視線の高さを同じにしてから味気なく言った。 「な、何がですか?」 その際立った容姿を前にしてるせいか、はたまた顔が近いせいか、身がすくまる。 口回りに嘔吐物がまだついていたのだ。 ーーうわ!恥ずかしー! 彼女はそれを指摘したのであろうことに、テンパる少年は気付いた。 パジャマの裾で口回りを拭こうと左手を動かした時。 「な、なんですか」 その腕はガシリと掴まれた。 その腕の体温は服を隔てていても、伝わった。 冷たい。 肉感はあるにしろ、生気をなくしたように体温が分からない。 ホントに人形なのかもしれない、いや、そもそも人間なのかも怪しい、と言う猜疑心を燦に植え付けるには、これだけで充分だった。 そもそもこんな静寂に満ちた、何もない不気味な場所に現れたのだから。 だが更に目の前の事実に、幼さが残る彼の心を混乱させた。
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