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彼の左手右手には彼女の肩。
鉄の匂いがする。
そして、手の感触はただただ冷たい。
「うっく……!全くもって大丈夫じゃないじゃあないか!」
自身より大きい体格のミハヤを支える、彼の顔は少しだけ苦しそうだ。
ーーこんなとこで強がったって意味ないんだからな。
手の甲にさらっと接地した綺麗で儚さを感じさせる銀髪もひんやりしていて、少し気持ちがよかった。
「ええー、気失ってる……」
目を閉じて、身体はピクリとも動かないが呼吸はしっかりしているのを、音で理解できる。
鋭くきりっと伸びるまつげは白銀。
燦は彼女の顔を比較的余裕をもって間近で見ることが出来たのは初めてだと思った。
「雪女も驚く肌の白さだ……」
芸術品を見ているような感覚。
そこには邪な心持など得ていないのだが、この距離は燦に異性の香というものを認識させた。
「仕方ない……よっこらせっ!」
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