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「忘れ物だ」
「僕には必要のないものだよ」
「だったらいっそ、あなたにあげますよ」
「……忘れ物だ」
人見知りな方ではない自分が、これほどまでの近寄りがたい人間に会ったのは、そうそうない。
「持ってけって……そういう意味ですか」
腰を曲げて柄を掴み、拾う。
「こんなもの拾ったってなんにもならないですよ。貴方もその変なやつ置いたらどうですか。」
「……」
男はなにも言わなかった。
ただ笑みを浮かべる。
しかし。
その表情を崩さぬまま、こう言うのだ。
「……発見」
と。
「何を言って……」
その黒い声と言葉に怯えを知った瞬間、いや。
刹那的一瞬だった。
「なっ……!」
鎌の先端は果たされた役目を無慈悲にこなしていた。
「ヒト、サヨウナラ」
腹と背中を行き渡る痛みに、燦は対応しきれない。
「えっ、ばっ…!キミだって……にん……!」
心と身体が交差しない。
ーー確かに怪しいなコイツとは思っていたけどさ、これは無さすぎるよ……!
そのまま地べたにうつ伏せで、崩れ落ちる。
「う……くっバぁ」
剣と隣同士、倒れてしまった。
「殺すのは、人間」
紅が薄い血を、横に溢れるほど流したまま……
負った傷の深さが絶望の世界へ誘いをかけていた。
「うっ、ぁああ……」
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