7人が本棚に入れています
本棚に追加
「っ……」
数分後、涼子はゆっくりと目を覚ます。辺りは既に薄暗く、淡く街灯が光り始めていた。
「身体は大丈夫ですか?」
「あ……うん。……治ってる」
受けた傷のあった右腕を見ながら、涼子は少し驚きながらも冷静な何時もの表情へ変わる。
「ありがとう楓」
「……! どう致しまして」
柔らかく、優しい笑みと感謝の言葉。そして名前を呼んでもらえた事に楓は嬉しさを感じた。
「あの、涼子先輩」
「ん?」
「大丈夫ですか?」
「頭の中を過去の……オリヴィアの記憶が一瞬で駆け巡って……勝手に身体が動いてた。靄が掛かって周りの人の顔ってのは分からなかったけど、楓の……サラ・イクテュエスの顔だけはハッキリしてる」
「サラはサラ、私は私です。先輩は私が守ります……だから」
「私だってこんな危険な事を楓1人にさせる気はない。オリヴィアの意志を無駄にはしたくないし」
「意志……」
オリヴィアの意志とは何か。訊きたい楓だったが思いを押し留めた。
「暗くなったな……帰ろうか?」
「はい!」
涼子と楓の姿は公園から消え、明かりが遊具や樹木を照らす。その樹木の陰から椿専門高等学校の制服を着た少女と、長身の眼鏡をかけたスーツの男性が姿を現した。
「まさかとは思ってたけど……」
「そうですね。一気に3人もエレメントが現れるなんて」
「涼ちゃんは貴方の部の部員だからしっかり見張るのよ?」
「貴女こそ……鳳さんと同じクラスでしょうに」
「勿論目は離さないわよ」
最初のコメントを投稿しよう!