#01 紺碧の絆

2/11
前へ
/54ページ
次へ
 埼玉県下。市の花が椿と言うことから名前が付いた椿市。自然が多く、都心まで新幹線でも、電車でも行きやすい交通アクセスに優れた場所に位置する。  椿市唯一の椿専門高等学校では、新1年生と在校生の対面式が体育館で行われていた。 「新入生代表を1年B組の小峯楓(コミネ カエデ)さん、お願いします」  司会の教員から呼ばれた新入生代表の生徒が前に進み出た。  真新しい紺色のブレザー、グレーのチェックスカート、学年色の緑色のリボンに身を包んだ新入生。白髪の長髪を後ろで束ね、線の細い白く透き通ったような肌は硝子細工のように繊細そうだった。容姿端麗でその天使のような存在感は会場全体の視線を集めた。 「私は……ある人に会う為にこの学校に入学しました」  楓のスカイブルーの瞳は真っ直ぐに2学年の方向に向けられていた。 「とにかく、この伝統と歴史のある椿専門高等学校に入学出来て今日が迎えられた事が今は純粋に嬉しいです。まだまだ慣れない事も多いです。先輩方、先生方、是非ご指導お願いします。 新入生代表1年B組、小峯楓」  楓が柔らかい笑みを浮かべて挨拶を終えた瞬間、体育館内は拍手で包まれた。 「ねぇ、さっきあの代表の子……涼(リョウ)ちゃん見てなかった?」  大和撫子という言葉が相応しい、姿勢が美しい黒髪長髪の優等生の少女が隣に話し掛けた。 「何処かな……私あの子に会ったような気がする」  大和撫子の少女の隣に居たのは、黒髪短髪で端正な顔立ちの少女。線は細いが、中性的な雰囲気を持ち合わせていた。 「ホント? じゃあもしかしたらあの子――」 「いや、私の勘違いかも」  中性的な少女は、席に戻る楓の後ろ姿を追った。脳裏に浮かぶ『誰か』を重ねて。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加