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夕陽が全てを橙色に照らす夕方。淡紫色のワイシャツとジーンズに着替えて買い物に出掛けていた中性的な少女。駅からの線路沿いを歩きながら、小峯楓を何処で見たのか、空を仰ぎながら考えていた。
「鳳涼子(オオトリ リョウコ)さん、ですね?」
正面から聞こえてきた透き通るゆったりとした声に、中性的な少女・涼子は目線を戻す。
「君は……」
「貴女をずっと探していました。あの日から彼女の魂を……意志を継いで」
目の前に現れた白銀の美少女・楓は、涼子を真っ直ぐな眼差しで見つめる。
「え……?」
「私は貴女を守る為に今、此処に居ます」
楓の言葉に動揺する涼子。何を言っているのか理解が出来ず、ただ楓の真剣な眼差しを見ているだけになった。
『グルルルルル……』
「!?」
突然、低い動物の呻き声が辺りを包む。
「ディアーブルっ……こんな時に! 先輩、此方へ!!」
「ぁ……え!?」
楓は涼子の手を握り、強引に引いてその場から走り出す。
『グルルルルル!!』
噴水のある公園に入った楓と涼子の目の前に、2メートル近い歪な黒陰が立ち塞がった。
「!?」
鋭い牙に鋭い爪。赤い瞳はまさに殺戮の獣の瞳。
「先輩私の後ろに!」
「君は……――っ!」
楓は獣の正面に堂々と立つ。涼子は危ないと楓に手を伸ばした瞬間、楓を水飛沫が囲む。眩い光と共に。
「……!」
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