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涼子の目の前には中世の騎士の鎧に身を包んだ楓の姿。白の髪色から、透き通った肌に合わせたような綺麗な白銀の鎧。所々に黒のアラベスクの模様が描かれているのが目立つ。
「かかってきなさい」
楓は腰に下げていた剣を抜くと、獣は楓向かって鋭い爪を振り上げた。
――パキッ……パキパキ……
楓の剣先に触れた獣の爪から、一瞬にして獣の体全部を氷が覆った。その氷は細かい粒子となって砕け散った。
「あらあら…簡単に倒されたわね」
「!」
涼子と楓の目の前に、背丈の低いローブを纏った少女が現れた。英国寄りの顔立ちが印象的で、笑みに幼さが残っていた。
「貴女達……此処で消えて」
(何なのこの子……威圧感が急に!)
楓がそう感じた瞬間、既に少女が目の前まで現れる。素早いその動きに遅れた楓は、剣を振り翳そうとする途中だった。
――キイイィィン!
少女が持つやいばが曲がりくねった特徴的な剣が、楓の剣を跳ね飛ばした。剣は宙を舞い、見事に涼子の真横の地面に突き刺さる。
「貴女達が再び私を止める事は……不可能よ。さようなら」
少女が丸腰の楓を完全に捉え、その剣先は心臓に狙いを定めていた。
『守れ。汝に私の力を与える……』
「……!?」
一瞬、時が止まった。涼子の脳裏に響き渡った低い抑揚のある女性の声。涼子は驚きながらも自然と楓の剣を握り締め、地面から引き抜くと楓と少女の間に勢い良く飛び込んだ。
「……!」
一か八か。恐怖よりも先に反射的に体が動いた涼子。見事に少女の攻撃を捌いた。
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