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「生身でもその運動神経……流石ね」
「涼子……先輩!」
涼子は少女を押し退けようと思い切り力を入れて剣を押す。中学時代の剣道とは違った恐怖感を、涼子は持っていた。
「生身の人間が“特別”な私に勝てる?」
少女が綺麗な笑みを浮かべた瞬間、真横から鋭い爪を持った鳥型のディアーブルが弾丸のような速さで涼子に体当たりした。
「っ……!?」
「先輩ッ!」
鳥型のディアーブルは体当たりの寸前、涼子の右腕を切り裂いた。白い素肌からは真紅の血が流れた。鳥型のディアーブルに剣をナイフのように向けて投げた瞬間、体勢が崩れて芝生に倒れ込んだ涼子。
「勿体無いから貴女は死体にした後、私の従順たる騎士にしてあげるわ」
「くっ……」
楓が駆け寄る隙もなく、仰向けに倒れた涼子の真上に馬乗りになる少女。眉間に皺を寄せ、苦痛に耐える涼子。
『欲せ! 私の力を!』
再び脳裏に響いた声。涼子は目を閉じて深呼吸をする。
(天蠍宮……オリヴィアの力が覚醒の兆しを……!)
楓は涼子の異変を一番に感じた。それと同時に楓の右手人差し指のシルバーの指輪が青く輝いた。
「これはっ……!」
涼子の右手が青い光を帯びた瞬間、少女は涼子から素早く離れた。
「もう何も奪わせはしない……レイラ・ウィスティリア!!」
「この姿なのに見抜く力もあるんだ。益々貴女に興味が湧いたわ」
涼子は右腕の中指に現れたシルバーの指輪を、痛みに耐えながら空へ翳した。
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