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指輪から水の飛沫が現れ涼子を覆い、飛沫が一瞬にして散ると、そこには漆黒の鎧を纏った涼子の姿。
鎧の縁は金色に輝き、胸当ての鎧には赤い蠍が描かれている。また、紫色のグラデーションのマントも印象的。“想”と書かれた左サイドの垂れも力強さを感じさせる。
中世の騎士装束に合わない日本刀を帯刀し、涼子はゆっくりその日本刀を抜いた。
「莫迦な……! 逆効果だったのね」
「“逆境を打ち返して”こそ、天蠍宮の……オリヴィア・スコルピオスの継承者、だろう?」
涼子は曇った顔付きから、少し晴れ晴れとした様子が伺えた。楓はその姿をただ真っ直ぐ見つめていた。
「今の貴女じゃ完全にオリヴィアの力を発揮出来ないわ!」
「オリヴィアは誓ったんだ。私はその願いを……誓いを叶える役目がある」
「私にはどうでも良いわ!」
レイラと呼ばれた少女は、涼子へ向けて駆け出す。涼子は静かに上段の構えをとると、向かってくるレイラの剣を軽く体捌きで避ける。そのまま上に構えた刀を力強く、左手を軸に振り下ろした。
「うっ……!!」
完全に涼子の太刀筋はレイラを捉え、斬った。その瞬間、少女の身体は砂と化して地面に落ち、白い塊が浮遊して何処かへ消えて行った。
「ふー……これはレイラ自身ではない、言わば“器”……か。っ……!」
「涼子先輩!!」
自然と武装の力は指輪へ凝縮され、涼子は私服姿に戻ると右腕の切られた部分を左手で押さえて跪く。楓も武装を解いて涼子に駆け寄る。
「うっ……くっ……」
今までに受けたことのない傷。遺体なんて通り越して訳の分からない吐き気と眩暈に苦しめられた。
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