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それは突然にやってきた。偶然なのか…、必然なのか…皆目検討がつかない。
数学Ⅱの授業終盤、先生は教科書を閉じたりしていた。
「如月」
「はい……」
呼名された上に、手で「ちょっと来い」というように手招きされたので、教卓に近づく。
長く黒い髪と黒い瞳は、彼女の清廉さを表していた。
彼女の名前は、如月月(キサラギルナ)
『果てしなく、嫌な予感がするな……』
(背筋がゾクッとするね……)
今の男っぽい口調の持ち主は陽(サン)という男。月は、とある理由から解離性同一性障害…つまり多重人格者になっていた。
つまり、陽とは一人の人格。ゆえに、月にしか聞こえない。
教卓に近づく。真ん中辺りの席で、視力があまりよくない月にとって、今日一番先生の顔が見えた瞬間だった。
黒い短髪。黒曜石のようなキラキラした瞳は、女性の心を震わせている。
彼の名前は、月城 白兎(ツキシロ ハクト)
数学Ⅱの担当教師。学校内では数少ない、若く未婚者の教師でもあった。
ちなみに、月の二年三組の副担任。
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