第一章 ―出逢い―

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「いきなり このような所に 連れてきて すまなかった。…雨に打たれたままでは 身体に良くないと思ってな。」 陸は 顔を上げると 笑みを浮かべ 首を横に振った。 「…いえ。俺の…方こそ…め…迷惑をかけて…しまって…。」 汚れの無い 陸の笑顔に 夕霧は 心が安らいだ。 忍びとして生きてきて 初めてのことだった。 疑うことを知らぬ 子供のような陸に 夕霧は 戸惑いを感じていた。 「ところで…お前 年は いくつだ?」 「14…です。」 「そう…か。」 女のように 色白で華奢な陸に 夕霧は 少し 照れたように 頬を染めた。 『何なのだ…?この気持ちは…?どうかしている…!』 頭を激しく振ると 夕霧は スッと 立ち上がった。 その気配に 陸は 眉を寄せた。 「何か 食う物を持ってこよう。」 そう言うと 夕霧は 慌てたように 部屋を出て行った。
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