第一章 ―出逢い―

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―それから 一週間が過ぎた。 あの日の夜から 陸は 高熱を出し 床に伏せていた。 なかなか 熱が下がらず 衰弱していく陸を 夕霧は 腕を組み 不安な面持ちで 見つめていた。 『医者にも診せ 熱を下げる薬も 飲ませたというのに 何故 回復せぬのか?』 軽く 瞳を閉じた夕霧は 腕を掴まれ ハッとした。 陸が うなされながら 震える手を伸ばし 夕霧の腕を掴んでいた。 夕霧は 陸の手を取ると 両手で包む。 「どうした?苦しいのか?」 夕霧が尋ねると うっすらと 瞳を開け 陸は 薄く微笑む。 「…すまぬ。俺の所為だ。ここへ連れて来ず お前の家に 帰してやるべきであった。…今 俺の仲間が 麓まで行っている。もうじき お前の身内が来るであろう。」 そう言った夕霧に 陸は 唇を震わせると 弱々しく 首を振った。
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